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トラックドライバー 体験談

幻のカツカレーの思い出

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通い慣れたカツ丼の味

俺は長距離のトラック運転手をしていて、朝の納品時間に間に合わせるため、深夜にトラックを走らせることも多い。
もちろん、車の運転が好きなのでトラック運転手になったわけで、トラックの運転という仕事を楽しんではいる。とは言え、やはり通い慣れた道だったりすると多少は退屈もしてくる。
そんなトラック運転手の仕事を続けていると、通い慣れた場所だからこそ、いろいろな飲食店を試しておいしい味を見つけるなんてことにも「楽しさ」を見出すようになる。
俺が毎月必ず1回は荷を届けに行くM県でも、結構いろいろな店を試した。
その中に、すごいお気に入りとなった和食店がある。昭和からトラック運転手に人気の店で、俺はそこのカツ丼にすっかり魅せられてしまった。カツは分厚くてジューシーで柔らかく、しかも甘辛いタレとベストマッチで、思い出すだけでもヨダレがたまらんって逸品。これに赤だしの味噌汁、おしんこが付いて結構リーズナブルなので、ここんとこM県に行くと必ずそこに寄ってこいつを食べてた。

嫌な予感

その日は、M県に行くのが久しぶりだったんだけど、行くと決まったときからすでに口と胃袋は「あのカツ丼」を迎え入れる気満々だった。
ただ、その日は荷積みに少し手間取り、その店に寄れるのが遅い時間帯になってしまった。嫌な予感がした。
閉店時間前ではあったんだけど、その「嫌な予感」に不安を感じながら通い慣れた道を行った。
予感は的中した。そろそろ店の明かりが見えるはずなのに、その明かりが見えない。建物はあったので、そこまで行くと「臨時休業」の札がかけられ、店が閉まっているのが分かった。
愕然となった俺のショックの大きかったことと言ったら、筆舌に尽くしがたかった。口と胃袋はすっかり「あのカツ丼」を迎え入れる気になっているし、このあたりに他に飲食店はない。俺はほとんど放心状態と言っていい心持ちで、仕方なくトラックを走らせた。

異次元の洋食屋?

それで周囲に何もない田舎道を走っていると、それまで見たことのなかった飲食店を見つけた。何度も通っている道なのに初めて見たので、最近できた店なのかと思った。
すでに深夜になっていて俺は空腹だったので、とりあえずトラックを停めた。そんな深夜なのに、駐車場には車がいっぱい停まっていて、店内も混んでいたので驚いた。
店は「いかにも昭和の洋食屋」って感じだったが、古びた感じはなかったので、やはり新しくできたのかと思った。そこにいた客たちは男も女も関係なく、ほとんどがタバコを吸っていたのが、何か異様に思えた。
俺はカツカレーを食べたが、いかにも昭和な、懐かしいタイプの味だったな。好みの味だったので、次に来たらまたここに寄ろうと思った。
その翌月、俺はまたM県に荷を運ぶことになった。前回より早めの時間に行けることになったが、通い慣れた和食店はスルーし、前回見つけた洋食店に寄ることにした。
しかし、その洋食店は見つからなかった。その道には、飲食店なんて1軒もなかったのだ。
一体、あの店は何だったんだろう? それにあそこにいた大勢の客たちは?

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